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Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

AM10:16 59丁目アパートメント自室にて。

ある晴れた日。めずらしくアッシュは早く起きていた。
彼にしては早い朝食を摂った後、上着に袖を通しながら英二に言った。
「図書館まで行って来る。」
「ちょっと待って。僕も用意するから。」
「おい。俺は連れて行くとは一言も言ってないぞ。」
「本を探すの手伝うからさ。」
「お前を連れて行くと、暇だのまだ終わらないのと騒ぐからうるせぇんだよ。」
「僕はね。アッシュ。1週間も外に出てないんだ。ストレスがたまってたまってもう・・」
英二が下を向き、悲壮な顔でアッシュに訴える。アッシュにはわかっていた。演技だ。
「勝手にしろ・・・。」
「いいの?」
英二の顔がパッと明るくなる。
「良いとは言ってない。」
「じゃぁ。勝手にする。」
アッシュは諦めた。
英二がカメラをいそいそと取りに行く。
「何でカメラなんだ?」
「帰りにセントラルパークにでも寄ろうよ。」
こいつにだけは敵わない。アッシュはそう思った。




AM11:56 ニューヨーク市立図書館にて。

静かな図書館の中。目の前の本に集中していたアッシュがふと、隣に目を向けた。
今日の英二はめずらしく早く帰りたいと文句を言わないと思っていたが、目をやると彼は開いた本を手に持ったまま眠っていた。
たまに頭が小さくカクンと落ちるが、また顔を上げそのままの体勢で眠っている。
ー器用なやつ・・。
そこへ図書館員がやって来た。肩を軽く叩いて英二を起こす。
英二はハっとなって起き、図書館員に消え入りそうな声で謝っている。
図書館員が静かにそこから離れていった。
バツの悪そうな顔で英二はアッシュに小声で話しかける。
「なんだよ。君。起こしてくれてもいいじゃないか。」
「自業自得の意味を辞書で引いて来い。」
「ちぇ。」
短く悪態をついて、どこへ行くのか立ち上がった英二にアッシュはすかさず声をかけた。
「辞書コーナーはアッチ。」
「トイレだよ!」
ちょっと大きい声を出してしまった英二に周りに座っている人から刺さる視線が痛い。
英二は顔を真っ赤にしてその場を離れた。
アッシュは本に顔を隠して笑いを堪えた。その肩は震えていた。



PM1:26 ニューヨーク市立図書館にて。

暇だ暇だとつぶやく英二に、そろそろ飯でも食いに行くかとアッシュが声をかけた。
2人は図書館を出て階段を下りていく。
「昼飯。ホットドックとラーメンとどっちがいい?」
「・・・・なんで二択?」
「久しぶりにラーメンが食いたい。」
「僕に聞いた意味ないよね?」
「じゃあホットドックにするか。」
「ラーメンでお願いします・・。」




PM3:02 セントラルパークにて

昼下がりのセントラルパークには様々な人がいる。芝生で寝転んでいる人、ジョギングしている人、都会の喧騒を逃れて皆れぞれの楽しみ方をしていた。
「英二。あのオッサン見てみろよ。」
アッシュの指す方向に英二が目をやると、中年の男性がベンチに座って本を読んでいた。いや違う。本を持ったまま眠っているようだ。
「え?何々?」
「さっきのお前。あんなカンジだった。」
その時、男性がガクンと頭を落とした。ハッと目が覚めたようだ。
辺りをキョロキョロと見渡してる。その姿はどこか笑いを誘うものだった。
「・・・・・。」



PM3:52 セントラルパーク内にて

2人の子供が緑道の先から風船を持って駆けて来る。
じゃれあうように笑い合うその姿はいかにも楽しそうだ。
そのうちの一人がアッシュに勢いよくぶつかった。
アッシュは子供を受け止める。
子供は転けながったが、子供の手から風船が離れた。
風船が飛ぶ。
英二が跳ぶ。
英二の手が風船の紐を捕まえた。
「ほら。前を見て走らなきゃダメだよ?」
地面に着地した英二は屈んで子供に目線を合わせ、この上なくやさしい笑顔で子供に風船を渡した。
子供達は2人にお礼を言って元気よく駆けて行く。
英二に向けてアッシュが感心したような笑みを口元に浮かべる。
「やるじゃん。」
「まぁね。」
英二も得意げに笑い返した。




PM4:32 セントラルパーク内にて。

英二は公園内にある池のキラキラ光る水面を撮ろうとしていた。
ファインダーを覗きながらどんどん水に近づいていく。
危なっかしい英二のその様子にアッシュが声を掛けた。
「気をつけろ。」
「うん。大丈夫。・・・わっ。」
「英二?!」
水面に近づきすぎて体制を崩した英二の後ろ襟をアッシュが掴んで引き上げた。
間一髪でカメラも英二も無事だった。
「・・・・・・・・」
「だから言ったろ。」
「うん。ごめん。」
「あやまるぐらいなら最初からすんなって。」
「ごめん。」
「・・・・・。」



PM5:32 59丁目アパートメント1階スーパーマーケットにて。

英二が真剣に食材を選んでいる脇でアッシュはうんざりした顔でショッピングカートを押していた。
英二がカートに食料を放り込んでいく。
アッシュが自分の嫌いなものをカートから棚に戻していく。
「もう!アッシュ!だから先に帰ってっていったのに!ついて来てって言ってないだろ?!」
「言われてないのに、図書館までついて来たヤツは誰だ?」
何か言い返そうと英二は口を開いた。
そこへミセス・オーエンが通りかかる。
「こんにちわ。クリス。英二。いつも仲がいいのね?」
「「こんにちわ。ミセス・オーエン。」」
2人ともにこやかな笑みを作って声を揃えて挨拶を返した。



PM6:11 59丁目アパートメントエレベーター内にて

2人はエレベーターに乗り込み12階のボタンを押した。
根菜や肉でいっぱいになったレジ袋を重そうに持った英二が呟く。
「あー重い。これから晩御飯つくると何時になるかなぁ。」
「だからデリカテッセンでいいっていったろ?」
「惣菜ばかりじゃ飽きるだろ?」
「別に。」
「これだからアメリカ人は・・・。僕が、ヤなの。もう。アッシュうるさいよ。」
「図書館でのお前程でもねぇよ。」
アッシュは読書を邪魔されるのがよっぽど嫌らしい。これからはもうちょっと静かにしようと英二は反省した。




PM6:20 59丁目アパートメント自室にて

「飯。できたら起こして。」
帰るなりアッシュがソファに寝転がり、そこにあった雑誌を開いて顔の上に被せた。
「はぁ?君。一度寝たら起こすの面倒なんだけど!?ちょっと。アッシュ!」
顔の上の雑誌を取り上げて顔を覗くとアッシュはすでに眠っていた。気持ち良さそうな寝息をたてて。
「まったく。」
小さなため息をついて、英二は手に持った雑誌をテーブルの上に置いた。
「今日の夕飯。何が出て来ても文句言うなよ?」
英二はキッチンとは逆方向ー大きな窓まで行ってカーテンを締める。
アッシュの顔に当たっていた夕日の光が遮られた。
そのままキッチンへ向いながら英二は思う。

ーずっとこんな日が続けばいい。

なんでもない穏やかな日々。







最後まで付き合ってくださってありがとうございました!
ど・・どうでしたでしょうか。楽しんでいただけましたでしょうか。
山なし、落ちなし、意味ぜんぜんなし。の7作目でした。(略して「やおいZ」)
なんでもない日々が本当に幸せなことだと、ワタクシは日々幸せを噛みしめております。
決して今日が休日で今ちょっと酔っ払っているからだというわけではございません。
(いやー。いいですよね。休日のお酒って。)
この話は起伏がなく途中で飽きちゃった方もいらっしゃったかと思います・・・。
アクションもないイベントもない萌えもない、なんでもない2人の日常に、なんとなく幸せを感じてくださったら嬉しいなぁ。と思いますが、どうでしょう・・。自信ない・・。地味すぎて・・・。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました!

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2012.09.23 03:09 | # [ 編集 ]

>Lucy様
コメントありがとうございます!
2人の一日を垣間見たと言って下さってありがとうございます。本当に日常を書いてみたかっただけなので。
2人にとって何事もない日常こそが貴重なものだったのではないかなぁ。と思います。
アッシュはそれを渇望していたのではないでしょうか。でも「住む世界が違う」とあきらめていて・・。
あのアパートメントで英二と2人きりで過ごす日々が、束の間でもアッシュが手に入れられた幸せなのかなー。なんて思ったりして。
「Snapshots」は心構えができてから・・。わかります。私も他のブログさんのアッシュが亡くなる前後の話はクリックするのが難しいですもの・・。
もちろん読んでくださると嬉しいですが、そこはそれ。ネットですから、読む読まないの選択はユーザーさんに任されております。読まなくても結構ですよ!気にしません。^^
読みたいものだけ読んでくださいね~。
それでは。本当にコメントありがとうございました!

2012.09.23 17:08 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

小葉さん、こんばんは。

とっても微笑ましいアッシュと英二の一日ですね(^^)この日はゆっくり二人で過ごせたのかな。
ほのぼのしていました。

ランチを食べる時間が13時26分とかなり遅かったり、夕食の前にひと眠りしたりとアッシュらしいマイペースさを感じてしまいました。

そしてミセスオーエンの前では二人とも良い子ちゃんになるところがすっごく可愛い!こういうの大好物です(笑)

笑ったり怒ったり好き勝手なこと言ったり…楽しそうに過ごす二人の姿が浮かんできました。

英二がこんな日がずっと続けばいいって思う気持ち、すごく分かります。私もそう思いますから。

読んで心がほんわかしましたよ。ありがとうございました。

2012.09.27 19:38 URL | らぶばな #ozafj4PA [ 編集 ]

>らぶばなさん
こんばんわ!
いつも見に来てくださってありがとうございます~。
とっても微笑ましいといってくださってありがとうございます♪とっても嬉しいです。
そうです。この日はきっとアッシュが完全オフの日でゆっくり休めた日だったにちがいないのです~~。
アッシュはマイペースですよね。遅い朝ごはんを食べて、遅い昼食を食べて、遅い夕食を食べて、夜更かしして遅くに寝て、朝は起きないんだと思います(笑)
私は英二は規則正しい生活をしていると思うのですが、アッシュに付き合う英二がかわいそう(苦笑)
でもかれは「仕方ないなぁ」と言って付き合うんだと思うんです。それが萌えです(笑)
ミセスオーエンの場面に大好物といってくださってうれしいです。
なんとなく彼女を出したのですが、ここ意外に反応いいなぁ。
心がほんわかしたといってくださってありがとうございます!
またぜひ遊びにきてください。
わたしもうかがわせていただきますね~~。

2012.09.27 22:59 URL | 小葉 #- [ 編集 ]

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