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Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

「kawaii ねぇ・・・・。」

英二が開けたドアの向こうからアッシュの呟きが聞こえてきた。
アッシュはいつものとおりパソコンでなにやらしている。
すでに2時間は経過した頃だろうか。
入れたてのコーヒーを持って英二は後ろからアッシュに近寄った。
「何やってんの?」
キーボードの左に湯気の出ているマグカップをコトリと置く。
「これ kawaii んだろ?」
「”かわいい”?」
アッシュの流暢な英語の中に日本語が混ざると違和感を感じる。
英二はアッシュの肩越しにパソコン画面を覗いた。

その中には子供向けのかわいらしいキャラクターの画像が並んでいる。

女の子から大人の女性までに人気のあるキャラクターのグッズ。愛嬌のあるイラスト。子犬の写真。スワロフスキーでデコレーションされた携帯電話。バンビの壁紙。着飾った女子高生・・。そのカラフルな色合いと、おもに甘い雰囲気のキャラクター達は画面をみている男2人の目をチカチカさせるものだった。

「はぁ。確かにこれは”かわいい”けど。どうしたの一体?」
「いつまでたっても英語が上手くならないオニイチャンのために俺が歩み寄ろうとしてんのさ」
「・・・・・。」
アッシュはどこで覚えてきたのだろうか。どうやら日本語の”かわいい”という単語の意味を調べているようだ。

かわいいねぇ。

何をどうしてその単語を調べることになったのかはわからないが、彼とその単語にはかなりな違和感がある。

ーいや。そうでもないか。

コーヒーの入ったマグカップに口をつけて画面をじっと見ているアッシュを英二は見下ろす。
「僕にとったら君は”かわいい”だね。」
アッシュはマグカップから口を外し、少しムッとして英二を見上げた。
「・・・俺がこのキラキラしたりピンクピンクしてるのと同類だって?」
「”かわいい”にはいろんな意味があるのさ。」
機嫌を損ねたアッシュを見ながら英二は説明を続ける。
「pretty cute lovely charming beautiful 全てをカバーできるけど、そのどれでもないね。」
「へぇ・・。」
「ただし」
英二は口の端に少し笑みを浮かべた。
「?」
「男が男にかわいいを使うと微妙な雰囲気が流れるから注意して。いろんな意味で。」
「・・・・・お前俺のこと馬鹿にしてんだろ。」
「”僕”が?”アッシュ”を?『いつまでたっても英語が上手くならない』僕にはそういう機会は滅多にないから、もうしそう思われたなら光栄かもね。」
眉を下げて大げさに肩をすくめて言い切る英二にアッシュは眉を寄せた。
「お前・・・性格が良くなったな。」
「先生がいいもので。」
「・・・・・。」
アッシュは黙って回転する椅子ごとくるりと机に向き直し、キーボードを叩きはじめた。

あれ?拗ねちゃった?

英二は笑いを咬み殺す。

「アッシュ。」

と掛けられた声にアッシュが無表情に首を少しだけ英二に向ける。そこをすかさず英二が自分の首を伸ばしてその唇に軽くキスをした。

唇をすぐに離した英二とアッシュの目が合う。
「そういう態度を”Kawaii”っていうんだよ?」
英二はにこやかにアッシュに向かってそう言った。
「・・・・・。」
アッシュはプイと、再度画面に視線を戻して、軽く鼻をならし、画面を切り替えファイルを開き、今度はなにやら難しい事をやりはじめた。キーボードを叩く手がこころなしか早い。
「君。」
「ーなんだよ」
「耳が赤い。」

その耳は後ろから見るとほんのり朱に染まっていた。

ほんとかわいいな。

英二は口に手を当て小さく笑った。

「今日の晩御飯は何がいい?」

・・・・。

アッシュは答えるつもりはないようだ。キーボードを叩く手が止まらない。

そんなアッシュの態度にやれやれと小さく息を吐き、英二がドアへ向かおうと踵を返した瞬間。

後ろから腕を強く引かれた。

わっ!?

そのまま後ろへ向かされバランスを崩し、前のめりになったところへ椅子ごとこちらを振り向いていたアッシュの前につんのめる。アッシュは英二を受け止めながら彼の胸のシャツを強く引っ張り、そしてー

気付ば英二は椅子に座ったままのアッシュに乗り上げ、彼に顎をつかまれキスをしていた。いや。されていた。

バランスの悪い体勢に、椅子から落ちないように気を配る英二の口蓋をアッシュは遠慮なく蹂躙していく。
いつの間にかうなじに回された手に頭を固定され英二はそのキスから逃れることができなかった。
「ん・・・。」
アッシュの巧みな終わらないキスに、バランスをとるために椅子の肘掛につっぱっていた手から力が抜け、体勢が崩れた。

その体をアッシュは胸に抱きとめる。

「お前の方こそ”Kawaii”んじゃねぇの?」
アッシュは英二を抱いたまま、片手で彼の顎を掴んで自分に向けさせ、からかうような笑みで英二に問いかける。
「使い方合ってる?オニィチャン?」
英二はさっきまでアッシュと合わせていた唇を乱暴に腕でぬぐい、アッシュの胸を押して立ち上がった。
「ー合ってるよ!」
英二は足音をドスドスと鳴らしながらドアへを向かった。
「英二。」
英二はドアを片手にアッシュを振り向く。
「顔が”真っ赤”だぜ?」

コノヤロ~!

英二はドアを力任せに閉めた。
その足でキッチンへと進む。

全く負けず嫌いなんだから。
そういうところがかわいくないったらかわいくない!

キッチンについた英二は足元のカゴにいれてあった人参をとり、そのヘタを包丁で力任せにダン!と切る。

そういうところ?

ふと英二は思い出した。

そういえば先日シンと暁が生まれたばかりの子どもを連れてこのアパートに遊びにきた。暁がいると、3人の会話は自然と日本語になる。ここに日本語のできないアッシュが加わると自然と英語になるのだが。その日はアッシュは出かけていた。

”やあ。かわいい赤ちゃんだね。目のあたりがあーちゃんに似ているかな?”
”そうでしょう奥村さん。かわいいところは私に似てよかったの。シンなんかに似たらごつくて可愛げなくて仕方ないわ。”
”お前。夫に向かってだな・・。”
”アーちゃん。シンは昔可愛かったんだよ。背もすごく小さくてね。”
”かわいいシンかぁ・・。ねぇ。アッシュも可愛かったんでしょ?”
”アッシュ?僕が出会ったころにはもう子供って言える年齢じゃなかったからなぁ。”
”俺は14歳のころなら知ってるぜ?初めてみたときは女だと思ったけどよ。”
そんなこと口走ったやつらがとんでもねぇ目に合ってたな・・・。とシンがブツブツ言っている横で、英二はアッシュの小さい頃を想像してみた。近頃人気の映画の子役でも、あんなにかわいいのだ。アッシュはどれ程かわいかったろう。でもー。

”何?今でも充分かわいいとか思ってるんでしょ?オクムラさん?”

英二は少し動揺する。図星だ。

”・・・あーちゃん。大人をからかうもんじゃないよ。”
”あら。私だってもう大人だわ。こんなにかわいい子供もいるんだもーん。”
”あいつがかわいい?意味がわからない・・。”

とシンが呟いたところでアッシュが帰ってきたのだ。もしかしてあのときの話を聞いていたのだろうか。

自分の名前と共に連発されるかわいいという単語。英二の動揺。

だから調べてたのだろうか?
いやきっとそうだろう。

としたらホントにやっぱり、


かわいいのは君のほうだ。


英二は包丁を持ちながら少し笑った。その顔はとても優しくてー甘いものだった。





ーfin.



日本語の“可愛い”には“愛しい”と言う意味が含まれるらしいです。

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013.06.25 13:44 | # [ 編集 ]

★>ちょこぱんだ様
個人面談前なんかーーーーい。(と裏手でツッコむ。)
返コメ不要ということなんで、返しませんけど。そこだけ(笑)

皆さん結構、朝とか昼とかに読まれるだなぁ。昼真っから何読ませてんだよ。私。

えー。でもあとひとつ返しちゃう。

「世間の王道から外れていようが、」
ありがとうございます!そんなアッシュに一緒に萌えてくださってーー!><。

やっぱり2次創作を楽しむってことは、仲間うちでキャーキャーやる事だよなぁ。と思います。
高校の頃を思い出すv。

それでは。うれしいコメントありがとうございました~。

2013.06.26 19:56 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2013.07.23 21:51 | # [ 編集 ]

★>aia様
わ~aiaさん。こちらにもコメありがとうございます~><

「再び逢えて嬉しい嬉しい嬉しいvv『かわいい君』」
2回もaiaさんにコメントいただけるなんてなんだか得した気分でホクホクです^^。

「眠れなかった覚えが」
そうなんだ・・。あの時aiaさんにこの話を読んでもらって反応がよくなかったら今回絶対日の目を見てなかった話なんですよ。糖度全部。ですから、本当にありがとうございました!
あの頃はまだバナナのBLが少なかったですよねぇ。(今はあちらこちらで見ますけど。それに乗っかっちゃったw)
だからチキンな私は勇気がなくて・・。あの時は本当にありがとうございました!

「「サイレントマンガ」場面転換なし編が今も脳裏に」
ああ。なんかそんなこと言った気がしないでも・・・ない・・・気が・・(汗)
今度本気で読み返しておきます。><。

「そして、キッチンに行った英二。」
あの時もすでにちょっと書いていたんですけど、あまりにもキリが悪くて隠してた。エヘ。
ここからは、どうだろう。いらないかなと思ったんですけど。話を落とすのにエピソードを増やしたらこうなっちゃった。
でも最後まで載せようかどうか、aiaさんに見ていただいたところで止めようかどうしようかと悩んだんですよ。

「アッシュ、かわいい。 が、ものの見事に描かれていることが、もぅド!ツボ!!」
ま~。そうコメいただけると~~~(照照)
aiaさんをドツボに落としたかと思うと(笑)超ウレシイです!

そうか。aiaさんはかわいいアッシュが好きなんですねー。
いいですねいいですねー。アッシュの趣味も合いますねぇ。^^。

「糖度31%は私の理想のアッシュ」
そ・・そこまで。こりゃ本当に”ドツボ”だったんですねぇ。嬉しいデス^^。

「すべてが「あるあるバナナ」」
バナナあるある認定いただけたー。(≧▽≦)vv

「そして、つづきます~(^_^)/~」
あざーすvv

それでは、とりあえず、こちらにも嬉しいコメントありがとうございました!

2013.07.24 21:49 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

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