25 一緒にいた時間なんて関係ないね
56 なんで伝わらない?
(原作後 S+英 2人は恋人設定です)
シンの瞳が暗く陰った。
「どうして。お前は俺を見てくれないんだ。どうしてあいつの事を忘れないんだ」
「君は…いつまでこだわっているんだい?ぼくが彼といたのはたかだか2年くらいのことだ。君とはその倍以上の時間を過ごしている」
「一緒にいた時間なんて関係ないね。あいつはまだアンタの心を捉えている。ふとした瞬間、その目は過去を見てるだろう」
「もうこの話は終わりだ。シン。いいかげんにしないとぼくも怒るよ」
2人が恋人同士になって、何度目かの口論だ。
必ず物別れに終わる。
シンはギリリと奥歯をかみ締めた。
なんで伝わらない?
今をみろよ。
ここをみろよ。
目の前にいる俺を……。
あんたは俺のもんだ。
これ書いてから「no rain no rainbow」 の2人を書いた。これが元ネタの一部デス。
21 好きになることがそんなに悪いことなのか?
(原作後、英二とマックス、とある喫茶店にて)
穏やかに近況などを談笑していた二人の会話の間が空いた。
マックスが冷めたコーヒーに口を付け、それをテーブルに静かに置く。
「お前、また女の誘いを断ったんだってな」
「……なんのことだい。マックス」
「なぁ。英二。あいつが死んでもう数年経つ。誰かを好きになることがそんなに悪い事なのか?」
マックスの真摯な目が英二を貫く。だが英二はその視線を受け止めず目をそらした。
「俺はお前に幸せになってほしい。あいつもそう思ってるはずだ。なぁ英二。あいつ以外のやつを好きになることがそんなに悪いことなのか?」
英二は手許の空になったコーヒーカップを弄びながらマックスに答える。
「そんな。ぼくは……だいたいぼくたちはそんなんじゃなかった」
「じゃぁなぜお前は恋人をつくらないんだ」
容赦なくマックスが英二にまた質問をする。
「ぼくは……マックスには関係ない」
英二は上着を手に持ち、ガタリと椅子を引き、自分のコーヒー代を机に置いてその場を去った。
原作の英二ってなんか最後まで独身でいそうだよね。次話からはA英ターン。
22 単純に好きなんだよ。それだけの事。
(原作後、アッシュ生きてた設定、A+英 日常の一コマ)
「納豆はね。体にいいんだよ」
英二はいかに納豆が体にどれほどいいのか、アッシュにその効能を話し始める。
「ナットウキナーゼってのがあってね。脳梗塞とかとか老人性痴呆症とか、血栓疾患の予防になるんだって、それにね」
……珍しくウンチク垂れるじゃねーか。
アッシュは英二の話を話半分に聞いていた。
英語が苦手な英二が、そんな専門用語をよく英語で覚えられたなとアッシュは感心する。だが口には出さなかった。その代わり、まだ納豆の効能を話し続ける英二の言葉をさえぎり、疑問の言葉を短く口にする。
「つまり?」
「つまりって……つまり僕は納豆が単純に好きなんだよ。それだけの事。」
「何?オニィチャン。難しい単語並べた割にはオチはそんな感じなんだ」
「うるさいな。食べ物の好き嫌いにたいした理由なんてあるか!」
「なら最初からそう言えばいいんじゃねぇのか」
「だってそう言ったってきみは食べないじゃないか……」
そんなに俺に食わせたいのか?
アッシュは呆れてため息をついた。
「英二」
「ん?」
「何を言われてもおれは食わない」
何度目かの敗北に英二は黙り込んだ。
納豆…食べなくても生きていけるし。
23 嬉しそうだね。いいことあったの?
(原作後、アッシュ生きてた設定、A+英 日常の一コマ)
「嬉しそうだね。いいことあったの?」
カレンダーを見ていたアッシュは英二に声を声を掛けられた。
自分はそんな顔をしていたのだろうか。
「いや……別に何もないさ。」
そうなの?と英二は納得したのかしていないのか、気のない返事をして、そう言えばさ、と他の話を始める。
アッシュは英二に気づかれないようにもう一度カレンダーを見た。
確かあの日は数年前の今日だったのだ。
アッシュの銃を持たせて欲しいと正面から自分にねだった怖いもの知らずの日本の少年の事を思い出した。
少年?いや確かおれより2歳年上だったかな、とアッシュは一人かすかに笑った。
記念日とか。覚えるの私は苦手。
24 人を愛する、簡単なコトだよ。
(原作後、アッシュ生きてた設定、A×英 事後。)
アッシュは腕の中で眠っている英二をじっと見つめた。
アッシュは男同士のセックスが嫌いだ。
否。
嫌いだと思っていた。
子供の頃から無理やり体を開かれ、貫かれ、いい思い出など一つもなかった。
男同士の性行為には痛みを伴わないことはない。身を持って知っているアッシュは、英二を抱くときにはいつも慎重になる。しかしそれははじめだけだった。そのうちコントロールが効かなくなり、事が終わった後は必ず後悔するのだ。
アッシュは人知れずため息をついた。
「…アッシュ?」
英二がアッシュの気配に気づき、薄目を開ける。
「どうしたんだい?」
「いや…」
「また何か難しい事を考えてたんだろう?」
「考えてねぇ」
「きみは僕とするのが嫌いかい?気持ち良くない?」
「嫌いじゃねぇ」
「ねぇアッシュこういうコトはさ。人を愛する、簡単なコトだよ。それだけのことなんだよきっと。」
英二はひどく眠いのか、瞼が今にも落ちそうだった。
「だからさ。気持ちよければいいんじゃないかな」
ぼくはきみとこういうことできて幸せなんだけどな、と英二が眠そうにそう呟く。
…とりあえず眠ろうよ。
そういって英二の黒い瞳がまた瞼に隠された。
しばらくアッシュはその英二の瞼を眺めていたが、英二を起こさないように抱きしめ直した。
-あたたかい……
そうしてアッシュも自分の瞼を閉じた。
英二がウダウダしているアッシュをデロデロに甘やかして溶けてしまえばいい。
28 ただひたすら耐えるのみ
(原作後、アッシュ生きてた設定、A+英 日常の一コマ)
アッシュは困惑していた。いや。この席から立ち上がりたかった。そして「今からちょっと出てくる」と言い置いて外出してしまいたかった。だがそれをすると事態がもっと悪くなることはIQ200の自慢の頭脳でわかっていた。その頭脳を使わなくても明白なことだった。
今アッシュは食卓の席についていた。目の前には黒髪の恋人が作った夕飯が並べられている。…かぼちゃのサラダ。かぼちゃのスープ。かぼちゃの煮物。かぼちゃの揚げ物。かぼちゃを使った野菜炒め。
…なんでだ…俺なんかしたか…?
ここ数日の出来事をフル回転で考える。だが、何が悪かったのかさっぱりわからない。わからないから対処のしようがない。
いや、俺は悪くない。…はずだ。
アッシュは気を取り直す。そして考えた。
ここは文句を言うべきだ。いつものとおり嫌味をいうか、それとも黙って席を立つか、飼い犬に全部やってしまうのも悪くない。
「英…」
「どうしたの?アッシュ。食べないのかい?」
英二が極上のほほ笑みをその顔に浮かべた。
……よし。
最善であろう結論をアッシュは出した。
ここはただひたすら耐えるのみだ。
そうして、目の前の食事を黙って食べ始めた。
アッシュ何しちゃったんだろう…
やったー!
切なーいものから明るいA英への流れはいいですね^^
22> 好きってAとか英のことだと思ってたけど、実は納豆のこと?!釣られちゃったw
24> あ… softですね〜
28> これ超ウケたw 英二はアッシュが怖くないけど、その逆は…(笑)
楽しい小説ありがとうございました!
2019.02.14 03:17 URL | pekorosu #- [ 編集 ]
★>pekorosu様
読んでくださってありがとうございます!
いやー。もうこれホント。
しかも感想まで書いてくださってうれしいvv
「実は納豆のこと?!釣られちゃったw」
ハハ。釣るつもりはなかったんですが。
お題を読んだ時にこれしか浮かばなかったんですよね。
でも釣られてくれてありがとう!ww
「softですね〜」
そうなんだ。これがsoftなんだ~。なるほど~。
あれからまたsoftと書かれてる記事をいくつか読んだんですが、
softと言われると、なるほど、と思える。でも自分からはsoftと気づけない。
言語の概念って難しい。けどそこがおもしろい~^^。
pekorosuさんは日本語で”わかるけどわかんない”的なことってある?
なさそうだけど…。あればスマイルででも教えてください^^
「英二はアッシュが怖くないけど、その逆は…(笑)」
ですよねですよね!
英二にだけは勝てないアッシュ。これ以上英二のご機嫌を損ねたくないアッシュ。
なんで英二が怒ってるのかわかんないのに、負けちゃうアッシュがかわいいw
それでは。うれしい感想ありがとうございました!
2019.02.15 23:59 URL | 小葉@pekorosu様へ #jneLG44g [ 編集 ]
おおー。100題が着々と進んでいる!
小葉さんから初めてこの100題のこと聞いて、既に何年か経つけど。
継続は力なりを目の当たりにしてる気分です。
そして、シリアスとコメディの振り幅が!
脳梗塞とか老人性痴呆症ってそれ英語で言ってんのか英二!?って思いつつ読んでたら、アッシュが説明してくれてたw
大人S英も、この短い中でシンの遣る瀬無さが伝わってきて。
せ、切ない~。
マックスを残してひとりコーヒーショップを後にする英二も。
せ~つ~な~い~~~ ><。
やっぱ小葉さん上手いわー。
そういや小説ブログだもんなー。(いや、決して忘れていたわけでは)
さすがだわー。
と拝読いたしました。
100題完走、陰ながら応援しています。
でわ。
2019.02.19 22:57 URL | 芙月 #YVWDSDMY [ 編集 ]
★>芙月様
「おおー。100題が着々と進んでいる!」
そうなんですよ。着々というにはインターバルがありすぎますけど(;^_^A
なんとかえっちらおっちら進んでいるっぽくみえるよねー。
「継続は力なりを目の当たりにしてる気分です。」
継続は力なりかぁ。
子供の頃はさ。なんでもすぐ結果や成果が欲しくて。
何かやりはじめても、できない自分が嫌で、うまい人と比べちゃって、すぐ色んな事を放り投げてたけど、
大人になってからは、継続するっていうのはそれなりに力になるんだなぁってことを覚えました。
ま、”下手の横好き”とか、”万年初心者”とかいう言葉の方が私にはあってるんですけどね。(-_-;)
あと”器用貧乏”。(;^ω^)
「そして、シリアスとコメディの振り幅が!」
はは。あざーす^^
「脳梗塞とか老人性痴呆症ってそれ英語で言ってんのか英二!?って思いつつ読んでたら、アッシュが説明してくれてたw」
脳梗塞とか老人性痴呆症の英単語調べたら覚えられなかった…。ナットキナーゼはそのままだったw
私、だいたいのバナナの謎はこじつけて小説にしちゃってるんですが、(英二はどうして料理ができるのか、とか。アッシュはなんでハンバーガーが嫌いなのか、とか)英二が最初からあんなに英語を喋れることだけは全然まったく想像がつかない。これ、ブログを立ち上げた時から考えてるんですが一向に”これだ!”ってやつが考え付かない。
芙月さん考えたことある?英二って英会話教室に行くタイプじゃないよね?行ったって英会話教室で話せるようになってる人見たことないよね?
田舎に外国人がいるわけないし。80年代の田舎の学校に交換留学生とか想像つかない。芙月さんの学校の英語の先生って英語話せた?宣教師とかさぁ、設定がかなり胡散臭いよね。米軍基地…島根にないし。
どう考えても設定が苦しいんだよなぁ。幼馴染がかわいい金髪の女の子だったとか?少女漫画かよ…(←そうだけど)
「せ~つ~な~い~~~ ><。」
はは。あざーす。
せつないのスキー^^
「そういや小説ブログだもんなー。(いや、決して忘れていたわけでは)」
いや、忘れがちだよね…。
ブログのコンセプトがブレてるからかご時世からなのか、どちらもだからか、お客様がいなくてねぇ。(今カウンターが回らない)
みんなpixivに集まってるんだろーなー。
一本普通の長さの小説仕上がってるんだけど、ここにそのまま載せようかなぁでもなぁ、支部に載せるようかなぁでもなぁ、って考え中。
「100題完走、陰ながら応援しています。」
あざっす!次はS暁のターンなので、これまたどうしようかな、と考え中。
なんか煮え切らない返コメでごめんなさい。
それでは、うれしいコメントありがとうございました!
2019.02.20 20:33 URL | 小葉@芙月様へ #jneLG44g [ 編集 ]
こんばんは こちらに失礼しますm(__)m
わたし基本原作厨なのでアッシュがいなくなったその後の話が好きだったりする…(ハピエン厨のはずなのに)生存if話も好きなんですが影を落としてる英二がいいっていうかなんというか…
そしてなんといっても大人シンはやっぱりいいですな!!いっちばん好きかもー
24日の絵、躍動感があっていいですね~
アッシュスパダリ説!頷くしかないですね!!全く持ってその通りだと思います!!
私その日は春コミ行ってとあるジャンルの字書きさんと会って来たんです~3年くらいコメントのやり取りしていた人なのでちょっと感動した。
イベントなんて遠い昔の15・6歳のころ、友達に連れられて冬コミ行って以来(その時はバナナの薄い本を買ったはず)おばちゃんが行ってもいいんだろうか…と心配したけど私より年上っぽい人も結構いたので安心した('ω')
話は変わりますが「月の街、花の都」千葉リョウコさんって読みました?あらすじ見たらなんとなく小葉さん好きかも~って思って…わたしは3/9発売の本と一緒に通販したのでまだ手元にはないんですが~
また遊びに来ます~┏(I:)ペコリ
2019.03.02 23:26 URL | ふなふな #- [ 編集 ]
★>ふなふな様
「こんばんは」
こんばんわー
「 わたし基本原作厨なので アッシュがいなくなったその後の話が好きだったりする…」
ああ。そうなのですね。実は私は好きかどうかと聞かれると、あんまり好きではないんですよ…。100題に書いてるのにこんなこと言ってごめんなさい。(他にも二作あるか(;^_^A)
書くなら書くんですけど、好きかと言われると哀しすぎて…。S英は嫌いじゃないのになにこの矛盾。
大人シンはめっちゃ好きですけど、自分の恋人になってくれるならアッシュよりシンですけど、アッシュがいなくなった後を考えると、英二もシンも哀しすぎて…。
”切ない話”っていうのは大好物なので、こんなちょっとした話なら、一瞬だけのせつなさだけを切り取って、それで満足できますが、ちゃんとした話を考えると、それから何年2人が悲しい気持ちで生きていくのかと思うと、胸が苦しい……。手放しで明るいS英ってあんまり考えられなくて…。真剣なS英話には必ずアッシュの影がつきまといますよねー。
「24日の絵、躍動感があっていいですね~」
あざっす~。
「アッシュスパダリ説!頷くしかないですね!!全く持ってその通りだと思います!!」
それもあざっす!
「「月の街、花の都」千葉リョウコさんって読みました?」
読んでないです。先週私の中でBL漫画祭りを開催したんですが、この年明けから十二国記の小説の再読にハマってコツコツ読んでます。十二国記って何回読んでもおもしろいのはなんでだろう。すごいよねぇ。
それでは、コメントありがとうございました~。
2019.03.03 13:27 URL | 小葉@ふなふなi様へ #jneLG44g [ 編集 ]
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