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Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

英二は走っていた。
肩にかけられた黒いショルダーバッグの中でカメラといくつかのレンズがぶつかる音がする。

アッシュが起きる前に帰らなきゃ。

英二は早朝の空気が好きだ。昔は毎朝ジョギングをしていたが、アメリカにきてからはサッパリだ。
まだ何者にも侵されてない清涼な風を切って走りながら英二は1週間前の出来事を思い起こしていた。




あの日。英二はいつものとおりマンハッタンの高級アパートメントの一室にいた。そこから望む春先のセントラルパークでは、芽吹いたばかりのみずみずしい新緑が春先の光を浴びてキラキラと輝いている。英二はどことなく浮かない顔で外を眺めていた。
室内に目を移すと、やっと起きたーというか起こしたーアッシュがシャワーを浴びた後、新聞を読みながら朝食を食べていた。すでに朝ではなかったが・・。気になる記事があるのか食事の手が止まっている。
そんなアッシュに英二は声をかけた。
『新聞を読むかベーグルを食べるかどっちかにすれば?』
『オレは新聞を読みながらベーグルを食うという芸を覚えたのさ。』
今朝なかなか起きようとしないアッシュに言った嫌味の返しがここでくるのか・・。
英二はあきれつつも、アッシュの嫌味に付き合ってみた。
『そんな芸じゃお金を取れないよ。』
『新聞を読みながらナットウを食うよりは取れるだろ。』
『納豆のほうがレベルが高くない?』
『臭くて客が逃げていくんだよ。オニイチャン。ボク、コーヒーが飲みたいなぁ。』
アッシュは新聞から目を離さず、空になったマグカップを英二に向けて傾けた。

まったく。口のへらない。

そのカップをひったくるようにして手にとり、英二はコーヒーを入れるべくキッチンへ向かった。
『英二。砂糖はなしで。』

自分でいれれば?

そう言おうと口を開いたところで電話が鳴った。立てられた新聞によって隠されたアッシュの表情は読めない。だが電話に出る気はないようだ。アッシュの方が電話に近いのに。

まったく。アッシュ。僕のことをなんだと思ってるんだ。

英二はカップに砂糖を5杯いれた。しかも山盛りだ。
コーヒーを注いだマグカップをアッシュの前に乱暴に置く。そしてカップからコーヒーがこぼれたのにもかまわず、電話へと向かった。
するとアッシュが新聞に視線を向けたまま英二に声をかけた。
『相手が誰かわかるまで、』
『名乗るなって言うんだろ?わかってるさ。』
少し乱暴な口調で言葉を遮られたアッシュは新聞ごと肩をすくめた。
『Hello?』
受話器をとってそう言った英二に、アッシュはやっと目を上げる。
『-おい・・』
アッシュの言いたいことはわかっている。相手が誰かわかるまで声すら出すなと言いたいのだ。
だがアッシュはそのまま黙り、こちらを見ながらコーヒーを口にする。
あまりの甘さで顔がゆがんだ。

ザマーミロだ。

‘英ちゃん?’

その時、受話器から聞きなれた声が聞こえてきた。

続く

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