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Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

「こんにちわ。ミセスオーエン。」
「まぁ。クリス。こんにちわ。」

その日の夕方。1階のエレベーターホールでアッシュはミセスオーエンと出会って挨拶をした。品の良いこの初老の女性は高級アパートメントの住人として実に相応しい。微笑みを交わしているうちに到着したエレベーターのドアを片手で抑え、アッシュはミセスオーエンに先に乗るようエスコートする。
「どうぞ。マダム。」
「ありがとう。クリス。」
エレベーターのドアが閉まりゆっくりと上昇し始める。
「クリス。昨日の晩御飯はおいしかったかしら?」
「?・・・ええ。」
「そうなのよかった。」
ミセスオーエンはふふふと上品に笑って話を続けた。
「英二が昨日、アメリカの家庭料理って何かを聞いてきたので、教えてあげたのよ。」
「・・・ミートローフ?」
「最近疲れているあなたに喜んでもらえるようなものを作りたいっていうから。アメリカの男の子はみんなミートローフが好きなのよ。って教えてあげたの。」
2、3の会話を交わしているうちに、10階に着いて彼女が降りて行った。

そう言えば。とアッシュは思い出す。
先日、英二にアメリカの家庭料理は何かと聞かれた。パソコンでの調べ物に夢中になっていたアッシュは生返事をしたが、パソコンに夢中になっていなかったとしてもたいした返事はできなかったろう。
自分は家庭料理ーというか母の味を知らなかった。
ケープコッドにいた頃は兄や父が作ってくれてはいたが肉くを焼く野菜を茹でるなど簡単な料理だけだった。
ニューヨークに来てからは、ストリートにいる時もクラブ ・コッドにいる時もこれと言ってまともなものは口にしたことがなく、ゴルツィネの屋敷では豪歳な料理が出たが、あそこで食べる料理は味がしなかった。
ストリートで食べたものと言えば、安くて簡単に手に入るハンバーガー等だ。ケープコッドでも父は酒場をやっていたにも係わらず、アッシュのための食事を作るのを面倒くさがったときには小銭を握らされハンバーガーを買いに行かされた。だからアッシュはハンバーガーが嫌いだ。食べ飽きた。

家庭料理かー

誰かのために作る料理が家庭料理だとするなら、今アッシュが食べている英二の作る料理が家庭料理だろう。アッシュは知らず微笑んだ。

今日の夕食は何なのだろうか。

そしてそんな事を考える自分に驚く。

そうこうしている間に自分の部屋の前まで着いた。昨日と同じくドアのベルを鳴らす。ほどなく英二がドアの覗き窓からこちらを伺い、鍵を開ける音がした。ドアを開けた彼の顔はいつもの通りにこやかだ。
「おかえり。アッシュ。」
「今日の晩メシは食えるんだろうな?」
「高級なキミの口に合えば。」
「口の方を合わせようか?」
「・・・そうだね。そうしてくれるとありがたいよ。焦げたミートローフしかないからね。」
「マジかよ。」
「ウソだよ。」
「お前・・・」
「取り敢えず入れば?」
「・・・・・・」
アッシュは黙って部屋に入り後ろ手で鍵を閉めた。上着を脱ぎながらそのままソファーへと向かう。英二はドアのチェーンを掛けていた。チェーンを掛け終わった英二は振り向いて、アッシュに向かって笑顔で話しかける。

「今日の晩御飯はなんとー」


イーストサイドの高級アパートメントを見事な夕陽が照らしている。その光はマンハッタンのビル群の壁を等しくオレンジ色に染めていた。その光が室内にも侵食しはじめる。
次々と各部屋の窓のカーテンが引かれ、またはブラインドが下ろされていく。
2人の少年が住んでる部屋のカーテンはまだ開けられたままだ。楽しそうにじゃれ合う年頃の少年達をも夕陽はオレンジ色に染めて行く。そのうち金髪の少年が眩しそうに目を細め窓の外を見て窓際に近づいた。
黒髪の少年は部屋の奥ーキッチンだろうかーに歩いて行った。
窓辺に佇んだ金髪の少年は全身を夕日の色に染めながらしばらく外を眺めている。
すると誰に呼ばれたのかふと振り返った。
部屋の向こうへ戻ろうとする時、カーテンが締められた。
何物をも等しく照らしていた夕陽は次第に夕闇へと変わり、カーテンに遮られた各窓にひとつまたひとつと暖かい明りが灯される。
少年達の住む部屋に灯された明かりもまた、暖かく淡い光を放っていたー。






最後まで読んでくださってありがとうございました!
この話はRecipes①と②の次の日の夕方の話です。料理ネタでどれほどひっぱるんだよ私って感じですが。これでとりあえず、Recipesは終わりです。今回はアッシュがハンバーガーを嫌いな理由を考えてみました。きっと食べ飽きたんですよ。そうに違いない。うんうん。また料理ネタを思いついたらRecipesの名前をつけて何か書いてみたいです。けど、いまの所さっぱり思いつきません。
ちなみにこの話の夕食では英二は何を作ったのでしょうか。私はとんでもないものを作ってたと思います。
「今日の晩御飯はなんと・・・きみの大好きなアボガドを納豆であえて見たんだ!」とか。
どう?これなら食べられるだろ? 的な。満面の笑みで。
いかがでしょうか?(笑)
というわけでまた「おまけのおまけのおまけ」を思いついてしまいました。気になる方はコチラをクリック
それでは。またよろしければ遊びにきてください♪
 

英二と暮らす前のアッシュは何を食べていたんでしょうね~。

あのお父さんがアッシュの為に料理をするとはちょっと想像しがたいですよね。店で出す簡単な料理とか?(お酒のあてをイメージしました)

ハンバーガーでも食っとけっって言って小銭を渡す父親は何となく想像できます。なるほど~。

家庭環境の影響は大きそうですよね。ハンバーガーが嫌いな理由のひとつかも^^。

あと、太ったりして魅力が減ったり動きが鈍くなったりするといけないからかな~なんて考えちゃいました。まぁホットドッグを食べすぎてもダメなんですけどね。

最後はとても美しい描写ですね。温かい夕食を二人は楽しんだのでしょうか?それとも…?



2012.09.08 11:41 URL | らぶばな #ozafj4PA [ 編集 ]

>らぶばな様

ご訪問&コメントありがとうございます♪
そうなんですよね・・あの親父、アッシュに何を食わせていたのかと・・。私も酒のアテだろうなとか思いました。でも「これで何か食って来い」とかやりそうで・・想像してくださって嬉しいです♪
そうですよね。アッシュは太りたくないってのものあると思うんです。脂ぎったおっさんの相手で「ああはなりたくない」とか思ってると思うんですよねーww
最後の描写を誉めてくださって嬉しいです♪
最後の終わり方がわからなくってあのようなカンジになったのですが、最後だけ浮いてるかなぁ。と思ってたので。
2人はきっと温かい食事をとったのだと思います。
英二の料理が成功してても失敗しててもとんでもないものだされてもww
コメント本当にありがとうございました。
よろしければまた遊びにきてくださいね♪

2012.09.08 14:46 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]

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