モーテルのドアを開けた途端、マックスと伊部はまっすぐにベッドへと向かい、そこに寝転がる。するとものの数分もたたないうちにマックスの大きないびきと伊部の寝息が聞こえてきた。
「ったく。年寄りはこれだからよ」
ベッドでいびきをかいている２人を見てアッシュが苦々しく悪態をつく。一日でも早くロサンゼルスに着きたいのだ。アッシュは知らずと奥歯を噛みしめた。
「まぁまぁ。おっさんたちに途中で倒れられるよりましだろ？」
ショーターがそんなアッシュを軽く宥めながら部屋をざっと見渡した。
「それより見ろよ英二！キッチンがあるぜ！よし！張大飯店の期待の跡継ぎ息子、このショーター様がお前の好きな中華をなんでも作ってやるぜ！」
「ほんとに？！」
英二が”中華”の二文字に目を輝かせる。旅の途中のガソリンスタンドに併設されているコンビニや、似たり寄ったりのメニューばかりのダイナーでの食事に飽き飽きしていたのだ。
それまで不機嫌そうな顔をしていたアッシュが何を思ったのか口の端を上げ、ニヤリと笑いながら英二をけしかけた。
「よかったな、英二。ショーターになんでも言ってみろよ」
「じゃぁ焼き餃子!」
「おっと英二。日本の焼き餃子は邪道だぜ。中国では夕飯で水餃子を作って、食べ残したやつを次の日焼くんだ。つまり焼いてる餃子は残り物リメイク。ゲストに残り物を食わせるなんて、そんなことは俺の目の黒いうちは断じて許さん！」
「ご……ごめん」
ショーターのよくわからな勢いに押された英二が思わず謝る。そんな英二にアッシュが笑いをこらえながら声をかけた。
「他のを言ってみろよ」
「じゃぁ、天津飯で」
ショーターが握った両手を大げさに振り上げ、そしてまた下へと振り下ろした。そのままポーズを決めながら説明しはじめる。
「嗚呼！英二。それは中国人は誰一人として知らない日本だけの中華だ！その昔、浅草で創業した来々軒が、」
「英二。他に好きな中華は？」
ショーターの言葉をアッシュが遮った。
「………うーんと……エビマヨ……かな」
「そいつぁ料理の鉄人・周富徳が日本で考案したものだーー！！」
「わーごめんなさいっ」
げんこつを作ったショーターに英二が思わず頭を隠す。
それを見ていたアッシュが肩を震わせて笑っていた。
「英二。心配すんなよ。そいつは本場中国の中華だって作れやしないさ」
「なんだとコノヤロ。もういっぺん言ってみろよ。おれの料理がまずいってのか！」
お前いままでどれだけ食わせてやったと思ってんだ。とショーターがアッシュの胸倉をつかむ。
「まだまずいっていってないだろ。餃子の中にツナだけが入ってたやつ。あれはうまかった」
「……あれはお前が金がねーっていうから、おれもなかったし……」
「ささみともやしだけをオイスターソースで炒めたやつとか」
「……ささみが安かったんだ」
「少ない限られた食材で最高の料理を作る。お前の料理はうまいと思うぜ？」
「………アッシュ……お前おれの事をそんな風に思ってくれてたのか」
「ショーター」
人種を超えた二人の絆をショーターの黒い瞳とアッシュのグリーンアイズが確かめ合った。
やっぱりおれの親友はお前だけだ！
とショーターがアッシュに抱きつこうとした。それをあっさりとアッシュがかわす。
「つまりお前の作るのはご家庭の節約料理であって本格中華向きじゃないってことさ」
「んだと」
「だいたい、自分のアパートで貧乏料理つくってる反動で、店に出ると何でもかんでもその場にある食材放り込むからまずくなるしマーディアに厨房出禁にされるんだぜ。自称跡取りさん？」
アッシュが片頬をあげて笑って見せる。
「もういっぺん言ってみろ。キサマ〜〜」
結局まずいって言ったな！とショーターがアッシュにつかみかかろうとする。
言ったがどうした。とアッシュは鼻で笑いながらショーターの手を右へ左へと交わしていった。
その騒ぎに眠っていることができなくなった伊部が起きだした。
「英ちゃん。なんの騒ぎなんだい？……腹減った…」
「ショーターが中華料理を作ってくれるっていったんですけど。それどころじゃなくなったみたいです。ぼくなんか作りましょうか」
「簡単なものでいいよ」
「炒飯とか？」
そこにいつの間にか起きていたマックスが口を出す。
「…それは、また揉めるんじゃないのか？」
どこから聞いていたのか、マックスが的確な指摘をした。
「じゃぁオムライスにしましょう」
そうして年長組２人と英二はアッシュとショーターを残して買い出しに出かけたのだった。
－fin.
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました！
だけど、モーテルに炊飯器があるのかとかいうツッコミはいらぬ。
それをいうなら８０年代のＮＹで英二はどうしてごはんと納豆と味噌汁とアジの開きを食卓に出せたのか。それを解決してからにしよう。うんうん。そうしよう。
一年以上ぶりに書いた小説でした。お粗末まさでした。載せようかどうか迷ったんですけど、楽しんでくださったならうれしいです＾＾。ありがとうございました～。
わ〜〜小葉さんの新しい小説が読めたぞ〜！！
朝っぱらからすみません。拍手ボタンの操作が分からないものでして…ほんとはいつも手が腫れ上がるくらい拍手してますんでございますが…小説の感想はこちらでも良かったでしょうか？
私の推しのショーターが…あぁ、3人組ほんとに好きです！ 私はショーターに関してはアニメでLOVEになりました。あのイカれた色のモヒカン、ごつい体つき、それに声！ 宇宙の味！ もう惚れるしかない…
小説、めちゃめちゃ楽しめました〜。ありがとうございます。 よしっ！ うちも今夜はオムライスだ〜い(笑)
2018.12.10 07:45 URL | aki #JalddpaA [ 編集 ]
★＞aki様
「わ〜〜小葉さんの新しい小説が読めたぞ〜！！」
わーakiさん。まさかまた書くなんておもってなかったです〜。
「小説の感想はこちらでも良かったでしょうか？」
はいはーい。どちらでもいただければすごいうれしいですよー。
ちなみに拍手の操作？クリックするだけです。
「私はショーターに関してはアニメでLOVEになりました。」
わかる。私も改めて好きになりました。なんだろ？漫画よりも存在感あったよねぇ。
「あのイカれた色のモヒカン、ごつい体つき、それに声！ 宇宙の味！ もう惚れるしかない…」
たしかに（笑）
紫のモヒカンってどこのパンクバンドのひと?って感じだよな。
あの胸筋無駄にすごすぎ。
でも、アニメのアッシュも脱いだらすごいよね。シックパッドがもはや甲殻類のていに（苦笑）
そして、「宇宙の味」w
「小説、めちゃめちゃ楽しめました〜。ありがとうございます。 」
わ〜い。そう言っていただけるのが一番うれしいです！
こちらこそ読んでくださってありごとうございます！
「よしっ！ うちも今夜はオムライスだ〜い(笑)」
美味しいオムライスができましたでしょうか（笑）
それでは読んでくださって楽しいコメントくださってほんとにほんとにありがとうございました！
2018.12.12 01:43 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]
こんばんは！最初は小葉さんのアニメ感想を読みに来ましたけど、あれ？あれ？？？？小説を書いていらっしゃったんですか！やっべーーー！
ワクワク♪o(・O・o)(o・O・)ｏワクワク♪
３人のやり取りにめっちゃ笑っちゃった！アニメでこういうエピソードをもっと出してほしかったなぁ。モーテルに泊まったりしてroad tripという長い旅をする設定も結構好きです。スーパーナチュラルというドラマにハマってた頃の懐かしさを思い出させてくれました！ハハ。
料理の名前はさっぱり分からなかったのでググってみました。なるほど！和製中華料理ってこういうもんがあるんだ。英二はその内、アッシュに作ってあげるのかな。アッシュが和食に飽きたみたいで、じゃ中華（和製）にしよう！とかw エビマヨ、美味しそう… (´﹃`;) ゲっ。食べ物ばかりの話でお腹が空いてきました…。夜中だよ、この腹の虫めっ！
今回も楽しく読ませていただきありがとうございました！
2018.12.18 02:30 URL | pekorosu #- [ 編集 ]
★＞pekorosu様
「こんばんは！」
こんばんわ！わぁ！こっちのブログでpekorosuさんのお名前を見つけることができるなんて超うれしいｖ
コメントありがとうございまーす＾＾
「小説を書いていらっしゃったんですか！やっべーーー！」
そうなの。前々回のpekorosuさんのスマイルで、いただいたお言葉にのせられちゃって、
うーん？なんか書けるかなぁ、うーんうーん。と考えちゃったｗ
わたし、チョロいやつなんですよ（苦笑）
とにかく気づいてくださって読んでくださってありがとーｖｖｖ
あ。お返事スマイル作成中でーす。
「３人のやり取りにめっちゃ笑っちゃった！」
あざーーーっす！
そう言っていただけるのがホントに一番うれしいｖ
「アニメでこういうエピソードをもっと出してほしかったなぁ。」
わかる。オリジナルエピソードもっとぶち込んで欲しかったなぁ。
ショーターがトラックの上から”へ～イ、かぁ～のじょぉ～～～”って女の子をナンパするような所ｗ
「モーテルに泊まったりしてroad tripという長い旅をする設定も結構好きです。」
road trip!
へぇ。もしかしてそんなジャンルがあるんですね。
そうか。アメリカの映画とかで、長い道を車で走っていくような話はそれに分類されるのか。
「スーパーナチュラルというドラマにハマってた」
スーパーナチュラル！！
私、以前、それにハマってみたくて、数話観てみたんです。すっごい設定がおもしろくて、超！私好みだったんですけど、超常現象の映像がすっごい怖くて、すっごい怖くて怖くて続きが観れなかった。orz。お化け屋敷とかほんとダメなんですよ。蚤の心臓を持ってるんです…。
今みたら観れるかなぁ。また観てみようかなぁ。
なんかオススメ洋ドラあったら教えてください＾＾。
私のオススメは”Suits”。邦訳の会話がすっごいおもしろくてかっこよくて。邦訳されているシーズンまでは全部見てるんだけど、英語字幕でも観ようとして、1stシーズンの３話目くらいで挫折してます。くそ…いつかは……。
「料理の名前はさっぱり分からなかったのでググってみました。」
あー。やっぱなぁ…。
pekorosuさんに唆されて（←唆すっていうな＜私）小説書いてみたものの。
”これは…読んでもらってもわかんないよね”とか思ってた。
なんかごめんなさい…。
でもこれリハビリだから。できればもう一本書きたい。（書けるかどうかわかんないけど）
てか。なんでショーターが英二も知らない和製中華料理事情に詳しいんだっていうねｗ
「なるほど！和製中華料理ってこういうもんがあるんだ。」
そうなの。おいしいですよ？ｗｗ 結構長い間、日本だけにしかないって知らずに食べてたけど。
「アッシュが和食に飽きたみたいで、じゃ中華（和製）にしよう！とかw」
そうですね。日本の食卓って和食に限らず普段から万国博覧会みたいに多様だから（かなり日本風になってるけど）、結構早めに炒飯とかは出してると思う。きっと。でも焼餃子も天津飯も原作中の英二が作るにはハードルが高いかなぁ。光の庭の英二なら作ってそうだけど。
「エビマヨ、美味しそう… (´﹃`;) ゲっ。」
これすごい美味しいですよ。機会があればぜひ食べてみてくださいｖ
でも海外のマヨネーズって日本のマヨネーズと味が全然違うって聞いたことがある…。（てか日本の方が魔改造してるみたいだけど）キューピーマヨネーズって売ってる？
「食べ物ばかりの話でお腹が空いてきました…。夜中だよ、この腹の虫めっ！」
ハハ。ごめんなさーい＾＾
「今回も楽しく読ませていただきありがとうございました！」
いえいえ。こちらこそ、読んでくださってしかも感想をこちらに書いてくださってありがとうございました！＾＾
2018.12.19 21:35 URL | 小葉＠pekorosu様へ #jneLG44g [ 編集 ]
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