「ハーイ。ボス・・。」
「・・お・・かえり。アッシュ・・・」
「なにやってんだお前ら。」
その日アッシュが帰ると、英二とボーンズとコングがテーブルに集まって何かをしていた。見ればテーブルに立てたコングの右肘を2人掛りで倒そうとしているようだ。
コングはというと2人にのし掛からられ、しかし負けじと力を入れた腕に筋を浮かせている。
「腕相撲。」
「う”・・・ぐぐ。アッシュも手伝ってよ!」
腕相撲?2対1で?
見ればあと少しでコングの右手の甲がテーブルにつきそうだ。
あと一押しか。
アッシュは片手で上着を脱ぎながらテーブルの横に立ち、少し屈み、もう一方の手で3人が組んでいる手を押さえつけた。とうとうコングの手がテーブルにつく。
「や・・と倒れた。」
英二はコングの手を握ったままそのままテーブルにつっぷした。ボーンズはカーペットに後ろ手をついて座り込んでいる。どちらも息が切れていた。
「ボスズルいぜ!」
コングが勢いよく立ち上がり真っ赤になった手を振りながら文句を言った。
「でもまぁ。三人がかりでやっと俺様を倒すなんてよぉ。お前らもまだまだだなぁ。」
コングが鼻を鳴らしながら座り込んだ2人に向けて得意げに胸を張る。
そんなコングを気にせず英二は黒曜の瞳を輝かせ、ソファに座ったアッシュに声を上げた。
「ねえ。聞いてよアッシュ!僕ボーンズに勝ったんだぜ!」
「へえ。」
アッシュは少し目を見開いてボーンズをみた。ボーンズの体格はその名のとおり骨ばっていて細身だ。しかしそこそこの力があるのをアッシュは知っている。少なくとも英二に負けないくらいは。でないと英二の護衛につけたりはしなかった。意外だ。
ボーンズが決まり悪そうにアッシュから目をそらす。
「バカ。お前ありゃぁ、ちょっと油断しただけだよ」
英二は年齢の割には幼く見えるその顔に、ワザと似合わない皮肉な笑みを浮かべてイヤミな口調でこう言った。
「ボーンズ。勝負には油断とかないんだよ。あるのは結果だけさ。」
「お前ー」
ー生意気だ。
腹を立てたボーンズが骨ばった腕をのばし英二を捕まえようとするが、英二はスルリと逃げる。
「ハハハ。僕は握力と腕力はちょっと自信あるんだよ。毎日腕立て伏せとかやってるしね」
俺のいない時にそんな事をやってるのか。英二は棒高跳びの選手だ。あれは確かに腕力が必要だろうな。
目の前ではボーンズが英二を掴もうと何度か手をのばすが、英二はヒラリヒラリとかわしている。軽い身のこなし。ソファを中心にクルクルと逃げ回る英二は非常に楽しそうだ。
ーあの日。マービンに追い詰められた時。
古い倉庫の壁に背を預け座り込んだ。出血した片腕をもう一方の手で抑えながら、見上げた青い空・・・。
スキップと自分の目の前でその空めがけて体を浮かせ、ヒラリと英二は壁を超えていった。
アッシュはあの時のことをぼんやりと思い浮かべる。
「だからアッシュ。」
「?」
「君にも勝てるかもしれないよ?」
英二をやっと捕まえて腕の中に抱え込んだボーンズが、英二の身の程知らずな発言に焦り、彼の黒髪を上から押さえつける。
「バっ。英二!お前なんてこと。」
「イタタタタ!ボーンズ腕を離して。」
痛がっている英二の首に回されたボーンズの左腕をアッシュがチラリと見た。その瞬間、ボーンズはパッと両手を離し、軽くホールドアップする。
そんなボーンズの仕草に軽く鼻をならし、アッシュは英二に目を向けた。少し息を切らしているがその顔は笑顔だ。ボーンズとの追いかけっこが楽しかったらしい。
「ーいいぜ。」
「「え?」」
英二とボーンズが同時に声を上げた。
「腕相撲。やろうぜ?」
ただし、
とアッシュは口の端にいつもの笑みを浮かべた。
「負けたほうが勝ったほうの言う事をなんでも聞くってのはどうだ?」
************
そして2人は今、ガラス張りのリビングテーブルの上でがっちり手を組んでいた。
コングがその上から、両手で2人の手を抑えている。
「じゃ。いくぜ。 Ready ・・・FIGHT!」
掛け声と同時にコングが自分の手をパッと離した。その瞬間、2人の腕と腕に力が入る。
力が拮抗する。
細かく震える互いの腕は、だが右にも左にも動かない。
「へえ。細っこいアジア人がなかなかやるじゃないか。」
アッシュが感心したフリをしながら英二の腕を少し傾ける。
「君こそ。銃より重いもの持ったことあったんだね。」
英二が真剣な顔でそれを押し返す。
やっぱり負けず嫌いだな。
出会った頃の2人は身長がほぼ一緒だった。が、いつの間にかアッシュが英二に差をつけていた。そもそもアッシュと英二は骨格が違う。白人と違って骨格自体が華奢な東洋人である英二にアッシュは負けるとは思っていなかった。
油断するとやられるかもな。だが油断しなければ決してやられない程度の力だ。そして・・。
悪いが英二勝負ってものは、
アッシュは口元に悪い笑みを浮かべる。
肘をテーブルにつけたまま器用に身を乗り出し英二の耳元に顔を寄せて何事かを囁いた。
「後ろ。ネズミがいるぜ?」
「え!?」
英二は思わず後ろを向きかけ、反射で少し腰が浮く。
その瞬間、
パタリ。
英二の右腕が倒され、手の甲がテーブルにつく。
「わ!」
「俺の勝ち。」
アッシュが倒した手をそのままに、英二を見て肩をすくめる。
驚いた英二はその手を離し思わず立ち上がった。もちろん後ろにはネズミはいない。
「なっ!反則だ!」
「反則? ルールなんかあったっけ?」
アッシュがとぼけた表情で座ったまま英二を見上げる。
「あるさ!普通あるだろ!」
「言ってみろよ。」
「使うのは片腕だけとか!」
「片腕だけだった。」
「机から肘を離さないとか!」
「離れてなかった。他には?」
さらに言い募ろうとして、英二は口を開けた。が、言葉がでてこない。
「お前本当にネズミが嫌いなんだな。」
「・・・・・。」
「あんなちっちゃいものどこが怖いんだよ。」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるアッシュに、英二は少し視線をそらす。
「アメリカのネズミは大きくて気持ち悪いんだ。特に地下鉄のやつとか・・。」
「・・地下鉄にいつ乗ったんだ?」
アッシュは英二になるべく1人では近寄るなと言っている場所がある。地下鉄はそのひとつだ。
「違うよ。NYに来た頃。伊部さんと。」
英二は言いよどむ。本当にそうなのか。探るように英二を見るアッシュの目を遮るように英二が叫んだ。
「とにかく!さっきのはずるいよ!人を油断させた隙に!」
「オニイチャン?『勝負には油断とかないんだよ。あるのは結果だけ』なんだぜ?」
「・・・・。」
先ほどボーンズに言ったセリフをそのまま返され英二は黙り込んだ。
「さあ。何いう事聞いてもらおっかなぁ。」
「・・・どうせ。納豆を食卓に出すなとかだろ?」
「まぁ。それもいいけど。出されても食わなきゃいいだけだし。」
「な!僕は君の健康を思って!」
「怒るなよ。ちゃんと食ってるだろ?」
「一口だけね。」
「そんなことよりお前、」
「そんなことってなんだ!」
楽しそうなアッシュとそれに噛み付く英二。
延々と2人の掛け合いが続いていく。
放っておくとなかなか言い合いの終わらない2人にボーンズが声を掛けた。
「じゃぁ。俺たち帰るから。」
英二がボーンズ達に顔を向けた。
「待てよ君たち。晩御飯一緒に食べて行きなよ。」
「英二。帰りたいやつには帰らせろ。」
「君ねぇ。なんでそういう・・。」
「2人ともご苦労だったな。」
ボーンズは知っていた。アッシュが引きとめない時にはサッサと退散した方がいいい事を。
英二の誘いに乗りたそうなコングの大きな背を玄関へと押しやりながら、オレたち用事があるから帰るよ、とボーンズは言った。まだなにやら言い合いを続けている2人を置いて部屋を出る。
パタリと閉めた玄関ドアを背に、ボーンズはなんとなく肩で息を吐く。
そんなボーンズにコングが文句を言った。
「なんでだよ。英二が食ってけっていってたじゃねぇか。」
「・・・・おごってやるよ。」
「マジで?何食おうかなぁ。」
「一皿だけな。」
「えー。」
「えー。じゃねぇ。」
オマエの食欲に付き合ってたら金がいくらあっても足りねぇんだよと、ボーンズはコングの背中を軽く叩いた。
2人はアパートメントを出てダウンタウンへと足を向ける。
チラリとボーンズはコングを見た。コングは真剣にその一皿を考えているようだ。
なんやかんやでボーンズはコングとウマが合う。大小コンビだとリンクス内で揶揄されているのを知ってはいたが、2人でいるのがしっくりくる。
ー親友か・・・。そんないいもんじゃねぇけどよ。
コングが傍らでああでもないこうでもないと呟く食べたいものリストを聞き流しながらボーンズは考える。
ボーンズは英二と出会うまであんなアッシュを知らなかった。英二に向ける屈託のない笑み。リンクスの中ではアレックスにさえ見せないだろう。
ボスにだってガス抜きも必要なんじゃねぇの?
俺達じゃため息つかせることばかりだしな。
ボーンズは先程の2人を思い浮かべる。
あんなのは無効だと怒る英二に、勝負は勝負だと返すアッシュ。
アッシュに向けてなんの衒いもなく言い合いができる奴は英二くらいだ。あの高級アパートメントの一室では、仲のいい2人の言い合いが未だ続いているのだろうか。ボーンズには英二の声が聞こえてくるような気がした。
『とにかく。僕は絶対君の願い事なんか聞かないからな!』
最後まで読んでくださってありがとうございました!
とりあえず、いかがでしたかね?楽しんでくださいましたか?楽しんでくださってたらいいなぁ。
えーと。アッシュと英二は仲がいいです(当然です)で、その仲のよさを一番近くでよく見ているのはボーンズじゃないかなぁ。と思います。アレックスが知らないような2人の仲のよさまで見ちゃってる。「ちょっとボスと英二って仲・・いいよな。」って(笑)。この話、ほぼアッシュ視点なんですけど、最後はボーンズ視点で締めました。その切り替わりに違和感なかったですか?大丈夫だったかなぁ。
最初は「ネズミ」部分を別バージョンで書いて、締めのボーンズ語りも別バージョンで書いてたんですけど、どっちがよかったかなぁ。いやあれはあれでああだけど、やっぱりこっちのほうがうちのブログらしいかなぁ。と悩み悩んでこんな結果に。
悩んだといえば、「アッシュのお願い」。これがすっっっっっっっっっっっっごい悩んで悩んだ結果、別に小説書きました。ので、また後日アップしたいと思います。^^。ちなみに何ヶ月悩んだかというとこれを書き始めたのが去年の7月なので・・。7ヶ月くらい悩みました(笑)
というか・・この話を読んだ貴女は、アッシュが英二にお願いするなら何をお願いすると思いますか?ぜひ、教えていただきたい。あるでしょ?あるでしょ?貴女の萌えが(笑)。コメントくださったら嬉しいデス。(あ。でも。コメントいただけるなら教えてくださらなくてもいいのです~><)
それでは、バナナ好きの貴女のバナナ琴線にこの話がどこかしら触れられていれば幸いです♪
今回も最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました~。
「・・お・・かえり。アッシュ・・・」
「なにやってんだお前ら。」
その日アッシュが帰ると、英二とボーンズとコングがテーブルに集まって何かをしていた。見ればテーブルに立てたコングの右肘を2人掛りで倒そうとしているようだ。
コングはというと2人にのし掛からられ、しかし負けじと力を入れた腕に筋を浮かせている。
「腕相撲。」
「う”・・・ぐぐ。アッシュも手伝ってよ!」
腕相撲?2対1で?
見ればあと少しでコングの右手の甲がテーブルにつきそうだ。
あと一押しか。
アッシュは片手で上着を脱ぎながらテーブルの横に立ち、少し屈み、もう一方の手で3人が組んでいる手を押さえつけた。とうとうコングの手がテーブルにつく。
「や・・と倒れた。」
英二はコングの手を握ったままそのままテーブルにつっぷした。ボーンズはカーペットに後ろ手をついて座り込んでいる。どちらも息が切れていた。
「ボスズルいぜ!」
コングが勢いよく立ち上がり真っ赤になった手を振りながら文句を言った。
「でもまぁ。三人がかりでやっと俺様を倒すなんてよぉ。お前らもまだまだだなぁ。」
コングが鼻を鳴らしながら座り込んだ2人に向けて得意げに胸を張る。
そんなコングを気にせず英二は黒曜の瞳を輝かせ、ソファに座ったアッシュに声を上げた。
「ねえ。聞いてよアッシュ!僕ボーンズに勝ったんだぜ!」
「へえ。」
アッシュは少し目を見開いてボーンズをみた。ボーンズの体格はその名のとおり骨ばっていて細身だ。しかしそこそこの力があるのをアッシュは知っている。少なくとも英二に負けないくらいは。でないと英二の護衛につけたりはしなかった。意外だ。
ボーンズが決まり悪そうにアッシュから目をそらす。
「バカ。お前ありゃぁ、ちょっと油断しただけだよ」
英二は年齢の割には幼く見えるその顔に、ワザと似合わない皮肉な笑みを浮かべてイヤミな口調でこう言った。
「ボーンズ。勝負には油断とかないんだよ。あるのは結果だけさ。」
「お前ー」
ー生意気だ。
腹を立てたボーンズが骨ばった腕をのばし英二を捕まえようとするが、英二はスルリと逃げる。
「ハハハ。僕は握力と腕力はちょっと自信あるんだよ。毎日腕立て伏せとかやってるしね」
俺のいない時にそんな事をやってるのか。英二は棒高跳びの選手だ。あれは確かに腕力が必要だろうな。
目の前ではボーンズが英二を掴もうと何度か手をのばすが、英二はヒラリヒラリとかわしている。軽い身のこなし。ソファを中心にクルクルと逃げ回る英二は非常に楽しそうだ。
ーあの日。マービンに追い詰められた時。
古い倉庫の壁に背を預け座り込んだ。出血した片腕をもう一方の手で抑えながら、見上げた青い空・・・。
スキップと自分の目の前でその空めがけて体を浮かせ、ヒラリと英二は壁を超えていった。
アッシュはあの時のことをぼんやりと思い浮かべる。
「だからアッシュ。」
「?」
「君にも勝てるかもしれないよ?」
英二をやっと捕まえて腕の中に抱え込んだボーンズが、英二の身の程知らずな発言に焦り、彼の黒髪を上から押さえつける。
「バっ。英二!お前なんてこと。」
「イタタタタ!ボーンズ腕を離して。」
痛がっている英二の首に回されたボーンズの左腕をアッシュがチラリと見た。その瞬間、ボーンズはパッと両手を離し、軽くホールドアップする。
そんなボーンズの仕草に軽く鼻をならし、アッシュは英二に目を向けた。少し息を切らしているがその顔は笑顔だ。ボーンズとの追いかけっこが楽しかったらしい。
「ーいいぜ。」
「「え?」」
英二とボーンズが同時に声を上げた。
「腕相撲。やろうぜ?」
ただし、
とアッシュは口の端にいつもの笑みを浮かべた。
「負けたほうが勝ったほうの言う事をなんでも聞くってのはどうだ?」
************
そして2人は今、ガラス張りのリビングテーブルの上でがっちり手を組んでいた。
コングがその上から、両手で2人の手を抑えている。
「じゃ。いくぜ。 Ready ・・・FIGHT!」
掛け声と同時にコングが自分の手をパッと離した。その瞬間、2人の腕と腕に力が入る。
力が拮抗する。
細かく震える互いの腕は、だが右にも左にも動かない。
「へえ。細っこいアジア人がなかなかやるじゃないか。」
アッシュが感心したフリをしながら英二の腕を少し傾ける。
「君こそ。銃より重いもの持ったことあったんだね。」
英二が真剣な顔でそれを押し返す。
やっぱり負けず嫌いだな。
出会った頃の2人は身長がほぼ一緒だった。が、いつの間にかアッシュが英二に差をつけていた。そもそもアッシュと英二は骨格が違う。白人と違って骨格自体が華奢な東洋人である英二にアッシュは負けるとは思っていなかった。
油断するとやられるかもな。だが油断しなければ決してやられない程度の力だ。そして・・。
悪いが英二勝負ってものは、
アッシュは口元に悪い笑みを浮かべる。
肘をテーブルにつけたまま器用に身を乗り出し英二の耳元に顔を寄せて何事かを囁いた。
「後ろ。ネズミがいるぜ?」
「え!?」
英二は思わず後ろを向きかけ、反射で少し腰が浮く。
その瞬間、
パタリ。
英二の右腕が倒され、手の甲がテーブルにつく。
「わ!」
「俺の勝ち。」
アッシュが倒した手をそのままに、英二を見て肩をすくめる。
驚いた英二はその手を離し思わず立ち上がった。もちろん後ろにはネズミはいない。
「なっ!反則だ!」
「反則? ルールなんかあったっけ?」
アッシュがとぼけた表情で座ったまま英二を見上げる。
「あるさ!普通あるだろ!」
「言ってみろよ。」
「使うのは片腕だけとか!」
「片腕だけだった。」
「机から肘を離さないとか!」
「離れてなかった。他には?」
さらに言い募ろうとして、英二は口を開けた。が、言葉がでてこない。
「お前本当にネズミが嫌いなんだな。」
「・・・・・。」
「あんなちっちゃいものどこが怖いんだよ。」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるアッシュに、英二は少し視線をそらす。
「アメリカのネズミは大きくて気持ち悪いんだ。特に地下鉄のやつとか・・。」
「・・地下鉄にいつ乗ったんだ?」
アッシュは英二になるべく1人では近寄るなと言っている場所がある。地下鉄はそのひとつだ。
「違うよ。NYに来た頃。伊部さんと。」
英二は言いよどむ。本当にそうなのか。探るように英二を見るアッシュの目を遮るように英二が叫んだ。
「とにかく!さっきのはずるいよ!人を油断させた隙に!」
「オニイチャン?『勝負には油断とかないんだよ。あるのは結果だけ』なんだぜ?」
「・・・・。」
先ほどボーンズに言ったセリフをそのまま返され英二は黙り込んだ。
「さあ。何いう事聞いてもらおっかなぁ。」
「・・・どうせ。納豆を食卓に出すなとかだろ?」
「まぁ。それもいいけど。出されても食わなきゃいいだけだし。」
「な!僕は君の健康を思って!」
「怒るなよ。ちゃんと食ってるだろ?」
「一口だけね。」
「そんなことよりお前、」
「そんなことってなんだ!」
楽しそうなアッシュとそれに噛み付く英二。
延々と2人の掛け合いが続いていく。
放っておくとなかなか言い合いの終わらない2人にボーンズが声を掛けた。
「じゃぁ。俺たち帰るから。」
英二がボーンズ達に顔を向けた。
「待てよ君たち。晩御飯一緒に食べて行きなよ。」
「英二。帰りたいやつには帰らせろ。」
「君ねぇ。なんでそういう・・。」
「2人ともご苦労だったな。」
ボーンズは知っていた。アッシュが引きとめない時にはサッサと退散した方がいいい事を。
英二の誘いに乗りたそうなコングの大きな背を玄関へと押しやりながら、オレたち用事があるから帰るよ、とボーンズは言った。まだなにやら言い合いを続けている2人を置いて部屋を出る。
パタリと閉めた玄関ドアを背に、ボーンズはなんとなく肩で息を吐く。
そんなボーンズにコングが文句を言った。
「なんでだよ。英二が食ってけっていってたじゃねぇか。」
「・・・・おごってやるよ。」
「マジで?何食おうかなぁ。」
「一皿だけな。」
「えー。」
「えー。じゃねぇ。」
オマエの食欲に付き合ってたら金がいくらあっても足りねぇんだよと、ボーンズはコングの背中を軽く叩いた。
2人はアパートメントを出てダウンタウンへと足を向ける。
チラリとボーンズはコングを見た。コングは真剣にその一皿を考えているようだ。
なんやかんやでボーンズはコングとウマが合う。大小コンビだとリンクス内で揶揄されているのを知ってはいたが、2人でいるのがしっくりくる。
ー親友か・・・。そんないいもんじゃねぇけどよ。
コングが傍らでああでもないこうでもないと呟く食べたいものリストを聞き流しながらボーンズは考える。
ボーンズは英二と出会うまであんなアッシュを知らなかった。英二に向ける屈託のない笑み。リンクスの中ではアレックスにさえ見せないだろう。
ボスにだってガス抜きも必要なんじゃねぇの?
俺達じゃため息つかせることばかりだしな。
ボーンズは先程の2人を思い浮かべる。
あんなのは無効だと怒る英二に、勝負は勝負だと返すアッシュ。
アッシュに向けてなんの衒いもなく言い合いができる奴は英二くらいだ。あの高級アパートメントの一室では、仲のいい2人の言い合いが未だ続いているのだろうか。ボーンズには英二の声が聞こえてくるような気がした。
『とにかく。僕は絶対君の願い事なんか聞かないからな!』
最後まで読んでくださってありがとうございました!
とりあえず、いかがでしたかね?楽しんでくださいましたか?楽しんでくださってたらいいなぁ。
えーと。アッシュと英二は仲がいいです(当然です)で、その仲のよさを一番近くでよく見ているのはボーンズじゃないかなぁ。と思います。アレックスが知らないような2人の仲のよさまで見ちゃってる。「ちょっとボスと英二って仲・・いいよな。」って(笑)。この話、ほぼアッシュ視点なんですけど、最後はボーンズ視点で締めました。その切り替わりに違和感なかったですか?大丈夫だったかなぁ。
最初は「ネズミ」部分を別バージョンで書いて、締めのボーンズ語りも別バージョンで書いてたんですけど、どっちがよかったかなぁ。いやあれはあれでああだけど、やっぱりこっちのほうがうちのブログらしいかなぁ。と悩み悩んでこんな結果に。
悩んだといえば、「アッシュのお願い」。これがすっっっっっっっっっっっっごい悩んで悩んだ結果、別に小説書きました。ので、また後日アップしたいと思います。^^。ちなみに何ヶ月悩んだかというとこれを書き始めたのが去年の7月なので・・。7ヶ月くらい悩みました(笑)
というか・・この話を読んだ貴女は、アッシュが英二にお願いするなら何をお願いすると思いますか?ぜひ、教えていただきたい。あるでしょ?あるでしょ?貴女の萌えが(笑)。コメントくださったら嬉しいデス。(あ。でも。コメントいただけるなら教えてくださらなくてもいいのです~><)
それでは、バナナ好きの貴女のバナナ琴線にこの話がどこかしら触れられていれば幸いです♪
今回も最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました~。
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2013.03.15 14:35 | # [ 編集 ]
>ちょこぱんだ様
コメントありがとうございます!
長くなったので”拍手コメント返礼”カテゴリにお返事させていただいております。
”拍手コメント返礼(3/15 拍手分)”を読んでやってください~^^
2013.03.16 07:03 URL | 小葉 #jneLG44g [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013.03.16 22:43 | # [ 編集 ]
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