2ntブログ

Banana Recipes

漫画 BANANA FISH の2次創作ブログです。 BANANA FISH 好きの皆様と仲良くしていただければ嬉しいです♪一部BL・R18あります。ご注意を。

ロサンゼルスへの旅への途中、車中泊が続く毎日に年長組2人が根を上げた。
モーテルのドアを開けた途端、マックスと伊部はまっすぐにベッドへと向かい、そこに寝転がる。するとものの数分もたたないうちにマックスの大きないびきと伊部の寝息が聞こえてきた。

「ったく。年寄りはこれだからよ」
ベッドでいびきをかいている2人を見てアッシュが苦々しく悪態をつく。一日でも早くロサンゼルスに着きたいのだ。アッシュは知らずと奥歯を噛みしめた。

「まぁまぁ。おっさんたちに途中で倒れられるよりましだろ?」
ショーターがそんなアッシュを軽く宥めながら部屋をざっと見渡した。
「それより見ろよ英二!キッチンがあるぜ!よし!張大飯店の期待の跡継ぎ息子、このショーター様がお前の好きな中華をなんでも作ってやるぜ!」
「ほんとに?!」
英二が”中華”の二文字に目を輝かせる。旅の途中のガソリンスタンドに併設されているコンビニや、似たり寄ったりのメニューばかりのダイナーでの食事に飽き飽きしていたのだ。

それまで不機嫌そうな顔をしていたアッシュが何を思ったのか口の端を上げ、ニヤリと笑いながら英二をけしかけた。
「よかったな、英二。ショーターになんでも言ってみろよ」
「じゃぁ焼き餃子!」
「おっと英二。日本の焼き餃子は邪道だぜ。中国では夕飯で水餃子を作って、食べ残したやつを次の日焼くんだ。つまり焼いてる餃子は残り物リメイク。ゲストに残り物を食わせるなんて、そんなことは俺の目の黒いうちは断じて許さん!」
「ご……ごめん」
ショーターのよくわからな勢いに押された英二が思わず謝る。そんな英二にアッシュが笑いをこらえながら声をかけた。
「他のを言ってみろよ」
「じゃぁ、天津飯で」

ショーターが握った両手を大げさに振り上げ、そしてまた下へと振り下ろした。そのままポーズを決めながら説明しはじめる。

「嗚呼!英二。それは中国人は誰一人として知らない日本だけの中華だ!その昔、浅草で創業した来々軒が、」
「英二。他に好きな中華は?」
ショーターの言葉をアッシュが遮った。

「………うーんと……エビマヨ……かな」
「そいつぁ料理の鉄人・周富徳が日本で考案したものだーー!!」
「わーごめんなさいっ」
げんこつを作ったショーターに英二が思わず頭を隠す。

それを見ていたアッシュが肩を震わせて笑っていた。
「英二。心配すんなよ。そいつは本場中国の中華だって作れやしないさ」
「なんだとコノヤロ。もういっぺん言ってみろよ。おれの料理がまずいってのか!」
お前いままでどれだけ食わせてやったと思ってんだ。とショーターがアッシュの胸倉をつかむ。

「まだまずいっていってないだろ。餃子の中にツナだけが入ってたやつ。あれはうまかった」
「……あれはお前が金がねーっていうから、おれもなかったし……」
「ささみともやしだけをオイスターソースで炒めたやつとか」
「……ささみが安かったんだ」
「少ない限られた食材で最高の料理を作る。お前の料理はうまいと思うぜ?」
「………アッシュ……お前おれの事をそんな風に思ってくれてたのか」
「ショーター」
人種を超えた二人の絆をショーターの黒い瞳とアッシュのグリーンアイズが確かめ合った。
やっぱりおれの親友はお前だけだ!
とショーターがアッシュに抱きつこうとした。それをあっさりとアッシュがかわす。
「つまりお前の作るのはご家庭の節約料理であって本格中華向きじゃないってことさ」
「んだと」
「だいたい、自分のアパートで貧乏料理つくってる反動で、店に出ると何でもかんでもその場にある食材放り込むからまずくなるしマーディアに厨房出禁にされるんだぜ。自称跡取りさん?」
アッシュが片頬をあげて笑って見せる。
「もういっぺん言ってみろ。キサマ〜〜」
結局まずいって言ったな!とショーターがアッシュにつかみかかろうとする。
言ったがどうした。とアッシュは鼻で笑いながらショーターの手を右へ左へと交わしていった。

その騒ぎに眠っていることができなくなった伊部が起きだした。
「英ちゃん。なんの騒ぎなんだい?……腹減った…」
「ショーターが中華料理を作ってくれるっていったんですけど。それどころじゃなくなったみたいです。ぼくなんか作りましょうか」
「簡単なものでいいよ」
「炒飯とか?」
そこにいつの間にか起きていたマックスが口を出す。
「…それは、また揉めるんじゃないのか?」
どこから聞いていたのか、マックスが的確な指摘をした。
「じゃぁオムライスにしましょう」

そうして年長組2人と英二はアッシュとショーターを残して買い出しに出かけたのだった。

-fin.


ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!
だけど、モーテルに炊飯器があるのかとかいうツッコミはいらぬ。
それをいうなら80年代のNYで英二はどうしてごはんと納豆と味噌汁とアジの開きを食卓に出せたのか。それを解決してからにしよう。うんうん。そうしよう。
一年以上ぶりに書いた小説でした。お粗末まさでした。載せようかどうか迷ったんですけど、楽しんでくださったならうれしいです^^。ありがとうございました~。